認知症のある方にとって、「今は朝なのか夜なのか」が分からなくなることは珍しくありません。
時間の感覚が曖昧になると、昼夜逆転や不安・混乱につながり、家族の生活にも影響を及ぼすことがあります。そんな中で注目されているのが、「朝と夜がはっきりわかる時計」。
時間だけでなく、時間帯やイメージで“今”を伝える工夫が施された時計は、認知症の方の生活を大きく助けるアイテムです。
この記事では、認知症の方に適した時計の選び方や活用方法、生活リズムを整えるためのアイデアをご紹介します。
認知症の方が「朝と夜の区別がつかない」理由とは?
時間認識の低下
認知症の進行に伴い、「今は午前か午後か」「朝ごはんの時間か夕方か」といった時間帯の認識が曖昧になっていきます。時計が読めたとしても、それが“どういう時間帯か”を理解するのが難しくなってしまうのです。
外の明るさだけでは判断できない
天気が悪くて薄暗い日中や、照明をつけたまま過ごす夜など、視覚情報から時間を判断するのが難しい環境では、さらに混乱が深まります。
不安や混乱による行動の増加
朝だと思い込んで深夜に起き出したり、夕方に「朝ごはんまだ?」と尋ねるような行動は、本人にとっても不安な体験です。家族にとっても夜間の対応が必要になるなど、心身の負担につながります。
朝と夜がわかる時計が必要な理由
「時刻表示」だけでは不十分になるケースがあるため、「朝」「昼」「夜」を視覚的に伝える工夫が求められます。
生活リズムを整えるきっかけになる
時計を見るたびに「今は朝」と認識できれば、食事・排泄・睡眠といった生活の基本がスムーズになります。生活習慣が安定することで、本人の自立や安心感にもつながります。
家族の負担を軽減できる
本人が自分で時間帯を把握できるようになると、「今何時?」「朝ごはんは?」という頻繁な問いかけや夜間の徘徊が減る可能性もあります。家族の介護負担を軽減する大きな一歩になります。
認知症の方に向いている時計の特徴
認知症の症状や段階に応じて、時計に求められる機能は異なりますが、共通して重視されるポイントは以下の通りです。
1. 「今が朝・昼・夜」かが一目で分かる表示
- デジタル文字で「午前」「午後」や「朝」「夜」と書かれている
- 「朝です」「夜です」などナレーションが入る音声時計
- 朝昼晩を色やアイコンで表示するビジュアル型
特に文字と色が組み合わさっている時計は、視覚情報が入りやすく、理解を助けます。
2. 大きくはっきりした文字
加齢により視力が低下していることもあるため、文字盤は大きく、背景とのコントラストが強いものがベストです。特に「漢字+平仮名」で表現されたものがより伝わりやすくなります。
3. 曜日や日付も同時に表示
「今日は何日か」「何曜日か」が分からないと、食事のタイミングや予定の把握も難しくなります。日付・曜日を大きく表示できるものは、認知症予防や進行抑制にも役立ちます。
4. バックライト付き(夜間視認性)
夜間にトイレへ起きた際など、暗がりでも時間や朝夜の表示が見やすいよう、バックライト機能がついたものが便利です。光の強さを調整できるものだと、眩しさも抑えられます。
実際に人気の「朝と夜がわかる時計」紹介
ドリテック 音声案内付きデジタル時計
- 朝・昼・夜を自動で音声ガイド
- 日時、曜日、温湿度まで表示
- 大画面&大きなボタンで高齢者にも見やすい
- アラームや服薬通知機能も付属
→ 「朝です」「夜になりました」などの音声案内が自然で分かりやすく、声のトーンも優しいと好評です。
セイコー デイデイトクロック
- 「午前・午後」「日付」「曜日」がはっきり表示
- 文字サイズが非常に大きく、遠くからでも見やすい
- シンプルで操作も簡単
→ 見るだけで「今が午前なのか午後なのか」が把握できるため、時間感覚をつかむのに役立ちます。
ふれあい生活館 光と音の認知症対応時計
- 色で朝昼夜を切り替える背景ライト
- 食事や服薬の時間を光と音で知らせる
- 時計としての視認性+生活の導線サポート
→ 時刻だけでなく「行動のタイミング」まで知らせてくれるのが特徴です。
家族ができる補助の工夫
時計の場所を固定して「視認の習慣」をつける
時計が見える位置にあるだけでなく、「いつもこの場所にある」という安心感があると、混乱を減らす効果があります。
- ベッドの横に設置(目覚め時に確認しやすい)
- ダイニングテーブル横(食事時間との関連づけ)
- トイレの前や居間の壁(生活動線上に設置)
時計の表示内容を一緒に確認する習慣
「今は朝だね」「今日は木曜日だね」といった声かけを日常的に行うことで、本人の時間認識を助け、時計の存在に意識を向けやすくなります。
スケジュールと時計を連携させる
時計の横にホワイトボードや予定表を貼り、「今が朝」「10時に病院」など視覚で情報を補うと、理解がよりスムーズになります。
朝夜が分かりやすくなる+αのサポートアイデア
自動カーテン開閉や照明のタイマー活用
- 朝になったらカーテンが自動で開く
- 夜になったら照明が自動で暗くなる
こうした「空間の変化」を取り入れることで、時計を見るだけでなく、生活環境全体から時間帯を感じ取れるようになります。
朝の音楽・夜の香りなど、五感で時間帯を区別
- 朝:鳥のさえずり音やラジオ体操の音楽を流す
- 夜:ラベンダーの香りや照明を暖色系に切り替える
五感を活用して「朝らしさ」「夜らしさ」を演出することも、時間の認識に大きな役割を果たします。
まとめ:時計は“時間を見る”以上のサポートツールになる
認知症の方にとって、朝と夜の区別がつくかどうかは、生活の質そのものに直結します。「時計が読めないから仕方ない」と諦めるのではなく、本人に合った時計やサポート方法を選ぶことで、時間感覚を補い、安心した毎日を過ごせるようになります。
この記事で紹介したポイントをおさらいすると:
- 「朝・昼・夜」を明示する表示や音声機能付きの時計が効果的
- 大きな文字、シンプルなデザイン、視認性の高さが重要
- 設置場所や声かけなど、家族の関わりが認識を支える
- 時計と生活導線をリンクさせて、五感全体で時間を感じられる工夫を
「朝なのに寝ている」「夜なのに起きてしまう」といったトラブルを防ぐためにも、“わかる時計”を上手に活用し、認知症の方とご家族双方にとって快適な時間を作っていきましょう。