「おじいちゃんがテレビをつけられない」
「おばあちゃんがエアコンの温度を変えられない」
こうした声は、多くの家庭で聞かれています。
高齢者がリモコンをうまく使えなくなる背景には、老化による身体的・認知的な変化がありますが、それを責めるのではなく、工夫と理解によって快適な生活をサポートすることが大切です。
この記事では、高齢者がリモコンを使えない理由を整理し、今すぐできる対策や、使いやすさを向上させる具体的な方法をご紹介します。
高齢者がリモコンを使えない主な理由
高齢者がリモコンの操作に困難を感じるのは、単なる慣れや知識不足ではなく、複合的な要因が関係しています。
視力の低下で文字やボタンが見えにくい
加齢によって小さな文字が見えづらくなり、リモコンのボタン表示が読めなくなるケースが多くあります。また、背景色とボタンの色が同系色だと、コントラストの不足で見分けがつきにくくなります。
指の動き・力の衰えで押しにくい
リモコンのボタンが固かったり、押し込みにコツが必要だったりすると、高齢者には操作が難しく感じられます。特に関節の痛みや手の震えがあると、狙ったボタンを正確に押すことが困難になります。
機能が複雑で混乱しやすい
近年の家電製品は多機能化が進み、リモコンにもボタンがズラリ。これにより、「どのボタンを押せばよいか分からない」という混乱が生まれます。特に、機能を覚えるのが難しい認知症の初期段階では、見慣れたリモコンでも突然使えなくなることがあります。
押し間違いや誤作動がストレスになる
「ボタンを押したつもりが反応しない」「間違って変な画面が出てきた」などの経験は、本人の自信をなくす原因になります。結果として、「触らない方がいい」と避けるようになる悪循環に陥ることも。
高齢者がリモコンを使えるようになるための工夫
それでは、高齢者が再び安心してリモコンを使えるようになるためには、どんな工夫が効果的なのでしょうか?家庭で取り入れやすい対策をご紹介します。
よく使うボタンだけを目立たせる
リモコン全体を覚えるのは難しくても、毎日使う「電源」「チャンネル」「音量」だけに絞れば、ハードルはぐっと下がります。
- カラフルなシールを貼って目印をつける
- 凹凸付きの透明シールで触感でも分かるようにする
- 使わないボタンには目隠しテープを貼って混乱を防ぐ
といった工夫で、直感的に操作しやすくなります。
使いやすいシンプルリモコンに買い替える
高齢者向けのリモコンは、ボタン数を最小限に絞った「シンプルリモコン」が主流です。具体的には以下のような特徴があります:
- 大きなボタンと太字の文字
- 音量・チャンネル・電源のみの構成
- 誤操作防止のロック機能付き
代表的な商品例:
- ELPA 簡単テレビリモコン
- オーム電機 高齢者用リモコン
- 朝日電器 学習型シンプルリモコン
これらは1,000円〜2,000円台と手ごろな価格で手に入ります。
リモコンスタンドや定位置管理で迷子防止
「そもそもリモコンがどこにあるのか分からない」というのも、リモコンを使えない一因です。以下のような定位置管理が有効です:
- テーブルの上に固定のスタンドを設置
- マジックテープや滑り止めマットで場所を固定
- 「リモコン置き場」と書かれたシールを視認しやすい位置に貼る
これにより、使いたいときにすぐ手に取れる環境を整えることができます。
家族や介護者ができるサポート
一緒に操作練習をして安心感を持たせる
リモコンが変わったときや家電が買い替えられたとき、最初の数日は家族がそばで一緒に操作練習をすることが大切です。
- 実際に操作を一緒にやってみる
- 覚えるべき手順を紙に大きく書いて貼る
- 操作後は「うまくできたね」とポジティブな声かけをする
こうした関わりによって、操作に対する不安が和らぎ、自信回復にもつながります。
「使わなくても済む」仕組みを取り入れる
操作そのものが難しい場合には、「リモコンに頼らない」仕組みを整えることもひとつの選択肢です。
- スマートスピーカーによる音声操作(例:アレクサ、テレビつけて)
- プリセットボタン付きのスマートリモコン(例:ボタン1でテレビON&チャンネル5)
- タイマー機能や自動運転モードの活用(エアコンなど)
これにより、操作を減らしてストレスを軽減することが可能です。
音声操作やスマート家電の導入も選択肢に
音声操作のメリット
Google NestやAmazon Echoなどを使えば、「声で家電を動かす」ことができます。リモコンを使う必要がないので、操作が難しい方にもぴったりです。
例:
- 「アレクサ、テレビつけて」
- 「OKグーグル、冷房25度にして」
- 「アレクサ、電気けして」
本人が使い慣れるまでは、家族がフォローしながら操作してあげるとスムーズです。
スマートリモコンでリモコンを“見える化”
Nature RemoやSwitchBotなどのスマートリモコンを導入すると、スマホやタブレットからテレビやエアコンを操作できます。また、壁に専用の操作パネルを設置することで、視覚的に分かりやすく、ボタン操作もシンプルになります。
実際にあった改善事例
事例1:ボタンを3つに限定して混乱を回避
90代の男性がリモコン操作で毎回混乱していたが、息子が「電源・チャンネル・音量」以外のボタンを目隠しし、3つだけを目立たせたところ、混乱が激減し本人の笑顔も増えた。
事例2:スマートスピーカーで自立支援
一人暮らしの高齢女性にアレクサを導入し、声でテレビ・電気・エアコンを操作できるようにしたところ、本人の「できた!」という満足感が増し、自立した生活に大きく貢献した。
まとめ:できない理由を理解し、できる工夫を一緒に探そう
高齢者がリモコンを使えなくなるのは自然なことであり、責めるのではなく、周囲が理解し工夫して支えることが何より大切です。
この記事で紹介した対策をまとめると:
- ボタンの視認性・操作性を工夫する
- よく使う機能だけに絞ってシンプルにする
- シンプルリモコンや音声操作を導入する
- 家族が一緒に練習・サポートする
- 定位置管理で「すぐ使える」状態を整える
大切なのは、「できなくなったこと」ではなく、「どうすれば安心して暮らせるか」を一緒に考える姿勢。ほんの少しの工夫で、暮らしがずっと快適になります。ツール